近代口語文体の歴史年表

特徴

 この年表は、近代の口語文体で書かれた文学作品を、発表年順に並べた年表であり、以下のような特徴がある。

  1. 著名な文章読本などに引用・言及されている作品に限定した
  2. 発表年順に年表形式で並べた
  3. 著作権が切れている作品については、インターネット上のフリーで入手できるテキストにできるかぎりリンクを張った

注釈

 著者名の前に付加されている記号は、その作品を引用・言及している文献をあらわしている。その対応関係は以下のとおり。

 「(連載開始)」と付記されているのは、その作品が、複数年にわたる連載によって発表されたため、連載開始年を発表年として記載したことを表す。

 テキストのリンク先は、以下のような優先順位で選択した。

  1. 青空文庫…ここで発見された場合には、「図書カード」のページにリンクを張った。
  2. 近代デジタルライブラリー…ここで発見された場合には、「本文」のページにリンクを張った(これは同サイトの仕様による)。
  3. 上記のどちらのサイトでも発見できなかった場合、それ以外に公開されている場所があれば、そこにリンクした。

 一部の著者だけ列を分けているのは、その著者の作品の引用・言及回数が多かったというだけの理由で、それ以上の意図はない。

 上記の文章読本以外に、主に以下のような文献を参考にした。

免責・連絡先など

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西暦 和暦 主要作品 森鴎外 夏目漱石 幸田露伴 国木田独歩 島崎藤村 芥川龍之介 横光利一 堀辰雄 太宰治 主な出来事 国語政策
1885 明治18 ○三遊亭円朝「塩原多助一代記                     羅馬字(ローマ字)会結成
1886 明治19                        
1887 明治20 ○二葉亭四迷「浮雲                      
1888 明治21 ○二葉亭四迷「あいびき
(ツルゲーネフの翻訳)
                    言語取調所発足
1889 明治22                     大日本帝国憲法発布   
1890 明治23   ○「舞姫                 第一回帝国議会  
1891 明治24 ☆竹越与三郎「新日本史                   足尾銅山鉱毒事件 辞書「言海」完成
1892 明治25   ○●「即興詩人
(連載開始)
  ○「五重塔                
1893 明治26                        
1894 明治27                     日清戦争 上田万年帰国。帝大教授に。
1895 明治28                     下関条約、三国干渉  
1896 明治29                        
1897 明治30 △尾崎紅葉「金色夜叉
(連載開始)
☆斉藤緑雨「おぼえ帳
○「そめちがへ                    
1898 明治31         □「忘れえぬ人々              
1899 明治32                        
1900 明治33 ☆泉鏡花「高野聖                      
1901 明治34         ○「武蔵野
□「牛肉と馬鈴薯
          八幡製鉄所が操業開始  
1902 明治35         ○「少年の悲哀           日英同盟 国語調査委員会
1903 明治36       ○「ひとよ草」                
1904 明治37 ☆幸徳秋水「兵士を送る                   日露戦争開始 第一期国定教科書使用開始
1905 明治38     ○★「吾輩は猫である
★「倫敦塔
              ポーツマス条約  
1906 明治39     ○「二百十日
□「坊っちゃん
★「草枕
    ○「破戒            
1907 明治40 ○□田山花袋「蒲団   ○★「虞美人草
★「京に着ける夕
○「文学論
  □「疲労
□「窮死
             
1908 明治41 ○田山花袋「   ★「坑夫     ○「           臨時仮名遣い調査委員会
1909 明治42 ○島村抱月「懐疑と告白 ○「追儺
○「金貨
○「大発見
○「仮面
★「永日小品                  
1910 明治43 ○泉鏡花「歌行灯
□石川啄木「一握の砂
□柳田国男「遠野物語
○「独身
○「牛鍋
△「青年
○「電車の窓
                韓国併合 第二期国定教科書使用開始
1911 明治44   □★「
(連載開始)
☆「子規の画               関税自主権回復  
1912 大正1 △谷崎潤一郎「悪魔」
△谷崎潤一郎「刺青」
☆「羽鳥千尋 ★「行人               護憲運動  
1913 大正2                     大正政変 国語調査委員会廃止
1914 大正3 ○☆永井荷風「日和下駄」
△泉鏡花「日本橋」
  ★「こころ               第一次世界大戦はじまる  
1915 大正4   □「最後の一句 ○★「道草
○「硝子戸の中
☆「光琳百図題言」     □★「羅生門       対華21ヶ条要求  
1916 大正5   △□「寒山拾得
△○「渋江抽斎
○★「明暗       □「          
1917 大正6 △□志賀直哉「城の崎にて」           ○「或日の大石内蔵助
□「戯作三昧
         
1918 大正7 ○佐藤春夫「田園の憂鬱」
△谷崎潤一郎「嘆きの門」
☆「礼儀小言」       ○「新生 □「地獄変       第一次世界大戦終わる  
1919 大正8

○武者小路実篤「幸福者」
○武者小路実篤「友情」
○木下杢太郎「食後の唄
○有島 武郎「或る女

    ○「運命                
1920 大正9 ☆志賀直哉「焚火」     ★「平将門
○「望樹記」
            国際連盟  
1921 大正10 ○△□志賀直哉「暗夜行路」(連載開始)           □「山鴫       ワシントン軍縮会議  
1922 大正11 ○萩原朔太郎「新しき欲情」           △「将軍          
1923 大正12 ○長與善郎「青銅の基督」
○稲垣足穂「一千一秒物語」
☆佐藤春夫「吾が回想する大杉」
                  関東大震災  
1924 大正13 ○里見とん「椿」
○堀口大学「夜ひらく」
(ポール・モランの翻訳)
△岸田国士「チロルの秋」
            ○「頭ならびに腹       穂積陳重「法律進化論」
1925 大正14 ○長與善郎「竹沢先生と云ふ人」
○中河与一「氷る舞踏場」
△川端康成「夏の靴」
    ○「蒲生氏郷       ○「静かなる羅列
○「街の底
    普通選挙法  
1926 昭和1 ○永井荷風「下谷叢話」
□川端康成「伊豆の踊子」
□柳田国男「山の人生」
            ○「春は馬車に乗って
△「ナポレオンと田虫
       
1927 昭和2 ○田山花袋「百夜」
○川端康成「春景色」
○池谷信三郎「
          □「歯車
★「或阿呆の一生
○「花園の思想 △「ルウベンスの偽画      
1928 昭和3 △梶井基次郎「蒼穹
○谷崎潤一郎「卍」
○十一谷義三郎「唐人お吉」
                  張作霖爆殺  
1929 昭和4 ★井伏鱒二「朽助のゐる谷間」         ○「夜明け前
(連載開始)
    ○「不器用な天使   世界恐慌  
1930 昭和5 ○阿部知二「日独対抗競技」
★小林秀雄「アシルと亀の子」
            ○「
△「寝園」
    ロンドン軍縮会議  
1931 昭和6 ○永井荷風「つゆのあとさき」
○☆谷崎潤一郎「盲目物語」
○吉行エイスケ「華やかな新宿について」
□折口信夫「石川県立大聖寺高等女学校校歌
                  満州事変勃発(柳条湖事件)  
1932 昭和7 ○伊藤整「生物祭」                   五・一五事件  
1933 昭和8 ○萩原朔太郎「郷愁の詩人与謝蕪村」
☆谷崎潤一郎「陰翳礼讚」
☆川端康成「末期の眼」
              △「美しい村   国際連盟脱退   
1934 昭和9                   ★「猿面冠者
★「ロマネスク
   
1935 昭和10 ○徳田秋声「仮装人物
★川端康成「雪国」
                ★「道化の華    
1936 昭和11 ○萩原朔太郎「定本青猫
△谷崎潤一郎「猫と庄造と二人のをんな」
☆折口信夫「三矢重松先生歌碑除幕式祝詞」
★石川淳「普賢」
                ★「狂言の神 二・二六事件  
1937 昭和12 △岡本かの子「花は勁し
★永井荷風「墨東綺譚」
                  日中戦争始まる(盧溝橋事件)  
1938 昭和13 ★中原中也「在りし日の歌                   国家総動員法  
1939 昭和14                     第二次世界大戦はじまる  
1940 昭和15 △織田作之助「夫婦善哉                   大政翼賛会  
1941 昭和16                     太平洋戦争始まる(真珠湾攻撃)  
1942 昭和17 ☆川端康成「名人」                      
1943 昭和18 ○谷崎潤一郎「細雪」(連載開始)                      
1944 昭和19                        
1945 昭和20                     太平洋戦争終わる(玉音放送)  
1946 昭和21 △小林秀雄「モオツアルト」                     当用漢字表告示
1947 昭和22 ○椎名麟三「深夜の酒宴」                 ★「メリイクリスマス 日本国憲法施行 新学制実施
1948 昭和23 ○正宗白鳥「自然主義盛衰史」
○野間宏「崩解感覚」
○大岡昇平「俘虜記
☆尾崎一雄「虫のいろいろ」
★尾崎一雄「美しい墓地からの眺め」
                ★「渡り鳥
★「人間失格
   
1949 昭和24 △川端康成「しぐれ」                     検定教科書使用開始
1950 昭和25 △久保田万太郎「うしろかげ」
△福田恆存「キティ颱風」
☆林達夫「旅順陥落」
★井上靖「比良のシャクナゲ」
★大岡昇平「武蔵野夫人」
★井伏鱒二「本日休診」
★川端康成「舞姫」
                  朝鮮戦争   
1951 昭和26 ☆大岡昇平「野火
★堀田善衛「広場の孤独」
                  サンフランシスコ講和条約  
1952 昭和27 △中村光夫「作家の青春」
★野間宏「真空地帯」
                     
1953 昭和28 △★武田泰淳「流人島にて」
★安岡章太郎「陰気な愉しみ」
★石川淳「珊瑚」
                     
1954 昭和29 ★小林秀雄「近代絵画」
★武田泰淳「ひかりごけ」
                     
1955 昭和30 △□幸田文「流れる」                      
1956 昭和31 ○三島由紀夫「鹿鳴館」
★花田清輝「さちゅりこん」
                     
1957 昭和32 ★中村真一郎「回転木馬」                      
1958 昭和33 ○武田泰淳「森と湖のまつり」                      
1959 昭和34 ★開高健「日本三文オペラ」                      
1960 昭和35 ○三島由紀夫「宴のあと」
★山本周五郎「青べか物語」
                     
1961 昭和36 ★倉橋由美子「暗い旅」                      
1962 昭和37                        
1963 昭和38                        
1964 昭和39 □大江健三郎「個人的な体験」
★野上弥生子「秀吉と利休」
                  東京オリンピック  
1965 昭和40                        
1966 昭和41 □丸谷才一「笹まくら」                      
1967 昭和42 ★野坂昭如「火垂るの墓」
★有吉佐和子「華岡青洲の妻」
★司馬遼太郎「豊臣家の人々」
                     
1968 昭和43 ★丸谷才一「年の残り」
★丸谷才一「川のない街で」
                     
1969 昭和44 ○庄司薫「赤頭巾ちゃん気をつけて」
★井上ひさし「11ぴきのねこ」
★井上ひさし「日本人のへそ」
                     
1970 昭和45 ○吉行淳之介「暗室」
★金井美恵子「夢の時間」
★筒井康隆「脱走と追跡のサンバ」
                  万国博覧会  
1971 昭和46 ★黒井千次「走る家族」
★辻邦生「天草の雅歌」
★安岡章太郎「サルが木から下りるとき」
★田中小実昌「自動巻時計の一日」
                     
1972 昭和47 ★井上ひさし「モッキンポット師の後始末」
★吉行淳之介「軽薄のすすめ」
                     
1973 昭和48 ○大江健三郎「状況へ」
★筒井康隆「狂気の沙汰も金次第」
                  第一次オイルショック   
1974 昭和49 ○小田実「状況から」
★丸谷才一「日本語のために」
                     
1975 昭和50 ★中野孝次「ブリューゲルへの旅」
★井上ひさし「おれたちと大砲」
                     
1976 昭和51                     ロッキード事件   
1977 昭和52 ○安部公房「密会」
★黒井千次「五月巡歴」
                     
1978 昭和53 ★外山滋比古「異本論」
★小林信彦「唐獅子株式会社」
                  日中平和友好条約   
1979 昭和54                     第二次オイルショック   
1980 昭和55